コンサルタントのコラム
ビジネスプロセスマネジメント入門
[第1回]ビジネスプロセスモデルについて考えてみる
2009年6月(2020年10月改訂)
ビジネスプロセスマネジメントって、なに?
ここのところ、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)という言葉を良く耳にします。たとえば内部統制やSOAなどの領域ではBPMがキーワードとして使われることが多々あります。
では、BPMとは一体何なのでしょうか。
日本BPM協会の定義によると
BPMとは、(バリュー・チェーンにおける他社とのプロセス連結やグローバル化の進展を背景として)ビジネスプロセスのとらえ方と継続的改革能力を、組織の成長・存続のための基本要件とするマネジメント概念
となっています。マネジメント概念・・・ ん~、なんか高尚な言葉ですね。(笑)
もうちょっと具体性を持たせて定義するとこうなります。
BPMとは、現場でのビジネスプロセス(仕事の進め方)に焦点を当てて、継続的な業務遂行と改善サイクルをマネジメントすること
そのためにプロセスを規定し、ITを利用してプロセスの自動化(ワークフローなど)を行い、その状況を把握し、継続的改善につなげる。
ということで、「ビジネスプロセスを規定する」ことがBPMのスタートとなります。
これは、「業務フロー」や「プロセスフロー」などと呼ばれる図を描いて業務の姿を明らかにする、という作業です。
これらの図は、BPMの世界では「ビジネスプロセスモデル」と呼ばれています。
今回のコラムでは、ビジネスプロセスモデルとは一体どういうもので、どんな目的を持つものなのかについて考えてみます。
ビジネスプロセスモデルとはどういうもの?
「モデル」の意味するもの
「モデル」という言葉から、みなさんは何を連想するでしょうか?「ファッションモデル」、「プラモデル(最近ではフィギュアと呼びますね)」、「モックアップモデル」などいろいろな言葉があります。
modelを辞書で引いてみますと「模型、原型、ひな形、模範、型」とあります。
私たちが「ビジネスプロセスモデル」と言う場合の意味としては「模型」が該当します。
-ちょっと休憩-
模型とは「本物から、何かを妥協して似せたもの」ということです。
- 自動車のプラモデル:「大きさや材質や機能を妥協して自動車の姿に似せたプラスチックでできたもの」
- ファッションモデル:「性格や知性などの内面には妥協して、理想の美に似せた人」
いや、決して「ファッションモデルは性格や頭が悪い」と言っているのではないのですが、少し偏見が入ってますね(笑)。厳密に言うとファッションモデルの場合の「モデル」とは「模範」の意味です。
ちなみにビジネスプロセスモデルでの「模範」は「エクセレンスモデル」とか「リファレンスモデル」とか呼ばれています。
「ビジネスプロセスモデル」とは
「ビジネスプロセスモデル」とは「ビジネス(Business)のプロセス(Process)のモデル」です。
プロセス(Process)とは、過程・工程・手順などを意味しますので、仕事の過程、業務手順と訳するのがいいかと思います。
「ビジネスプロセスモデル」と言う場合の「モデル」の意味は「ある目的にそって、現実世界のものごとを抽象化したもの」だと理解してください。
ということで、「ビジネスプロセスモデル」とは「ある目的にそって、仕事の過程を抽象化したもの」ということになります。
ところで、ビジネスプロセスモデルとよく似た言葉に「ビジネスモデル」というのがありますが、この場合の「モデル」は「型」を意味しています。
「こういうふうにやればすごく儲かる」というような、ビジネスの型に関しての権利保護を目的とするのが「ビジネスモデル特許」です。
ビジネスプロセスモデルの目的とは?
まずは共通認識
ビジネスプロセスモデルの目的としてよく言われる例として「ビジネスを可視化する」とか「あるべき姿を明らかにする」とかがあります。
でも、私たちは自分自身の仕事の中身を当然知っていますし、「こうなったらいいよね」というイメージも(おぼろげながら)持っているはずです。
つまり「可視化する」とか「明らかにする」とかが意味しているのは「関係者間での共通認識の手助けになるものを作る」ことだと言えます。
ビジネスプロセスモデルというと、一般的には「図式化」されたものをイメージしますが、「目的」にそって「抽象化」されていれば、文章で記述されたものも立派なビジネスプロセスモデルだと言えます。
業務マニュアルや作業手順書といったものも、ビジネスプロセスモデルの一種だと思います。ただし、「共通認識」という点に着目しますと「わかりやすさ」とか「曖昧でない」とかが大切ですので、多くのビジネスプロセスモデルは図式化されています。
と、いうことで、ビジネスプロセスモデルの目的は「関係者間での共通認識」である・・・ なんか変ですね・・・。
共通認識は目的ではない
「このモデルで我が社のビジネスの共通認識ができました。○○株式会社バンザ~イ!!」・・・ありえません(笑)。
「誰が、何を、どうする」ための「共通認識」なのかがはっきりしていないと、とても気持ち悪いですね(こういった状態を「目的と手段をはき違えている」と言います)。
ビジネスプロセスモデルを使って「誰が、何を、どうする」の例としては以下の様なものがあります。
- 経営者が、新事業の実現可能性を確かめる
- 工場責任者が、××製品の生産ラインの効率化を考える
- 情報システム部門が、ある業務のシステム化が可能か検討する
目的ごとにビジネスプロセスモデルの表現も異なる
これらの目的を達成するために作られるビジネスプロセスモデルとはどういったものになるのでしょうか?
使う人の役割と視点、業務の細かさ、などなど、かなり異なる機能がそれぞれのビジネスプロセスモデルに求められることになります。
つまり、「目的が異なれば、作成されるビジネスプロセスモデルの表現も異なる」ということになります。
実際には目的によって様々なビジネスプロセスモデルが存在します。代表的な表記法だけでも10種類以上ありますし、モデルの種類や利用方法を考慮すると無限と言っていいほどのバリエーションがあります。
デファクト・スタンダードとしてのBPMN
こうしてビジネスプロセスモデルに多種多様な表記法が乱立していることで、企画者や利用者と開発者のコミュニケーションがうまくいかないことが大きな問題として認識されてきました。
こういった問題を解決し、ビジネスの検討からワークフローの実装まで一貫して利用できる新しいビジネスプロセスモデル表記法として「BPMN」が米国BPMI.orgによって提唱されました。
- ※BPMN:2004年5月3日にBPMN 1.0を発行。現在、BPMI.orgは標準化団体OMGに吸収され、BPMN 2.0を策定中。
BPMNを使ったビジネスプロセスモデルの例
この新しい表記法であるBPMNは以下のような特徴を持ちます。
- 既存の多くのプロセス表記法の「いいとこ取り」をしている(UML Activity Diagram, IDEF, ebXML BPSS, ADF Diagram, EPCs など)
- 少ない種類の図形でプロセス中に起こる複雑な状況を表現できる
- ビジネスユーザ、ビジネスアナリストとIT技術者が共に使用できるプロセスモデリング仕様なので、ビジネスプロセスの分析~設計~実装までが同一表記法で可能
- プロセス駆動言語であるBPEL(Business Process Executin Language)への変換ができる
こういった特徴を、BPMI.orgは砂時計の絵を用いて表現しています。
ビジネスとITをつなぐ要素技術のひとつとして、BPMNは大きな可能性を持っています。 多くのモデリングツールのベンダーがBPMNによるビジネスプロセスモデリングをサポートしており、今後は国際的な標準表記法として世界中で利用されていくことになると思われます。
執筆
NECネクサソリューションズ
シニアコンサルタント 冨澤 雅彦
[日本TOC推進協議会 正会員、日本UML推進協議会 BPMN研究会副主査]
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