コンサルタントのコラム
ビジネスプロセスマネジメント入門
[第5回]3フェーズ・ビジネスプロセスモデリングについて
2011年3月(2020年10月改訂)
概要
前回は業務の可視化(ビジネスプロセスモデリング)を行う上での粒度をどのように設定するかについてのお話でした。
第2回で、ビジネスアナリストがハイレベルビジネスプロセスモデルを用いてビジネス環境の可視化・分析・改善を行うと説明しましたが、今回は業務改善の一手法である、3フェーズ・ビジネスプロセスモデリングについて説明していきたいと思います。
3フェーズ・ビジネスプロセスモデリングとは
3フェーズ・ビジネスプロセスモデリングでは業務改善の段階(フェーズ)に応じて、3つのビジネスプロセスモデル(ハイレベル)を作成します。
3つのビジネスプロセスモデルとはAs-Isモデル、To-Beモデル、Can-Beモデルを指し、それらを作成するフェーズをAs-Isフェーズ、To-Beフェーズ、Can-Beフェーズと呼びます。
まずは、3つのフェーズについての違いを見てみましょう。
As-Isフェーズ
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成果物
As-Isモデル
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目的
現状のビジネスプロセスを可視化する。
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効果
現状のビジネスプロセスが抱える問題点を検討するベースとなり、業務改革・システム改革の基礎資料となる。
To-Beフェーズ
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成果物
To-Beモデル
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目的
経営課題や業務課題を解決した中長期的に目指すビジネスプロセスを可視化する。
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効果
業務課題を解決したビジネスプロセスを可視化することにより、システム構築ベンダーに実現したいビジネスとITとの要求内容を具体的につたえる。
Can-Beフェーズ
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成果物
Can-Beモデル
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目的
新システムにより実現するビジネスプロセスを可視化する。
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効果
新システムを構築する際の詳細な業務フローのベースとして活用できる。 業務改善後の業務マニュアルとして活用できる。
各フェーズのモデリングの仕方
ここからは各フェーズのモデリングの仕方についての詳細を記述していきます。
1.As-Isフェーズ
課題
通常の受注生産品は製造で受付後、組み立てへ。特急で受注の場合、製造で受付後に購買へ購入依頼。
営業⇒製造⇒購買の流れで発注までの手間・時間が掛かっている。
ビジネスプロセスモデル
As-Isモデルを作成する際に検討すべきこと
- As-Isモデルにて現状のビジネスプロセスを可視化するには、以下の2つの方法があります。
- 現場の実務担当者の業務をヒアリングした上でビジネスプロセスモデルを作成する
- 現場の実務担当者がビジネスプロセスモデルを作成する
- 事前にビジネスプロセスを記述する際のガイドラインを作成しておくことが大切になります。 これにより、複数の担当者がビジネスプロセスを作成する際のばらつきを抑えることができます。
- As-Isモデルを作成する場合は、BPMNに則した表記法を必ずしも守る必要はありません。 これは、可視化することが主目的となるハイレベルモデル全般に言えることです。
2.To-Beフェーズ
成功要因
受注から納品までのリードタイムを短縮し、顧客満足度を向上したい。
改善点(To-Be)
- 特急か否かの判断ノウハウを営業に渡し、特急の場合は営業から直接購買へ発注依頼。
- 受注後に特急かどうかを判断し、ワークフローで後続のプロセスと連動させる。
ビジネスプロセスモデル
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To-Beモデルを作成する際に検討すべきこと
- 業務改善の目的や成功要因を明確にする必要があります。
詳細についてはコラム 正しいIT戦略のつくりかたに記載してあります。 - 成功要因が明確になったら、As-Isモデルをベースにし、業務上の改善点を反映させます。
- 業務によってはリファレンスモデル(SCOR 等)といった業界標準モデルがあるので、それらを参考にするのも有用です。
3.Can-Beフェーズ
改善点(Can-Be)
- 特急か否かの判断ノウハウを営業に渡し、特急の場合は営業から直接購買へ発注依頼。
- Can-Beにおいてはワークフロー化は実施せず、今後の改善テーマとして留め置く。
ビジネスプロセスモデル
Can-Beモデルを作成する際に検討すべきこと
To-Beモデルが全て実現できることに越したことは有りませんが、必ずしもそうなるとは限りません。
そのため、To-Beモデルの実現できない部分をCan-Beモデルに反映する必要があります。
最後に
3フェーズ・ビジネスプロセスモデリングを行うことで、効果的・効率的な業務改善・新システム構築が可能となるので、積極的に実施することをおすすめします。
執筆
NECネクサソリューションズ
コンサルタント 横澤 雄己
[ITコーディネータ、PMP]
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- ビジネスプロセスモデリングサービス
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