コンサルタントのコラム
ビジネスプロセスマネジメント入門
[第2回]3レベルビジネスプロセスモデルについて
2009年7月(2020年10月改訂)
ビジネスプロセスモデルの種類
前回のおさらい
前回はビジネスプロセスマネジメントにおけるビジネスプロセスモデルの役割についてのお話でした。
その中で、目的ごとにビジネスプロセスモデルの表現が異なり、それらを共通の表記法で表現できるBPMNというものがあることをお話しました。
そして、BPMNの標準化を行っている米国BPMI.org(現在はOMGに吸収統合されています)によるBPMNを利用する人とその目的がシンボライズされた図をご紹介しました。
この図が伝えたいこと
- ビジネスプロセスマネジメントへの参画者のうち、BPMNを利用するのはビジネスアナリスト、プロセスデザイナ、システムアーキテクトの三者である
- それぞれの目的は、ビジネスプロセスのモデリングとそのプロセスをIT上で実行することの間にある
参画者とモデルの関係
モデリングを行う参画者(モデラー)とモデルの目的をもう少し詳細にまとめると、以下のような3つのレベルが考えられます。
本コラムでは、このようなハイ・ミドル・ローといった分類を、BPMNにおける3レベル・ビジネスプロセスモデルと呼びます。
参画者(モデラー) | モデル名称 | 目的 |
---|---|---|
ビジネスアナリスト | ハイレベル | ビジネス環境の可視化・分析・改善 |
プロセスデザイナ | ミドルレベル | 業務アサイン(ワークフロー)、 シミュレーション、モニタリング |
システムアーキテクト | ローレベル | サービスオーケストレーション |
ハイレベル・ビジネスプロセスモデル
次の図が、ハイレベル・ビジネスプロセスモデルの例です。
私達コンサルタントが描くビジネスプロセスモデルは、ほとんどがこのハイレベル・ビジネスプロセスモデルです。
ビジネスの現在の姿を確認したり将来の姿を検討したりするのに利用します。
ハイレベル・ビジネスプロセスモデルの例
ハイレベル・ビジネスプロセスモデルの目的
ハイレベル・ビジネスプロセスモデルの目的をまとめると、以下の5点が考えられます。
- プロセスの可視化と関係者の共通認識(現在の姿・あるべき姿・実現する姿)
- ビジネスプロセスの定性的な分析・改善
- ビジネスの手法やパフォーマンスの改善
- 業務マニュアルとしての利用
- ミドルレベルモデル作成のためのベース作成
ハイレベル・ビジネスプロセスモデルのポイント
ハイレベル・ビジネスプロセスモデルのポイントを列挙すると以下の通りです。
- まず業務一覧を参考にし、モデリング対象業務を決定する
- プロセスの粒度(レイヤ)を標準化する
- 例外処理を含まない通常処理の流れを中心に描く(例外処理はコメントで記述しておく)
- 作業の順序・条件判断や分岐結合・作業の同時並行性を明示する
- 役割(ロール)と役割の相互作用に着目して、メッセージ(外部との情報のやりとり)やオブジェクト(書類など)を明示する
- 組織や役割を横断して、機能がどのように連携しているか、つまりハンドオフ(委譲行為)がプロセスのどこでどのように行われているか明示する
- ビジネスルールの切出しとルール定義を行うが、ビジネスルールをプロセスで表現しようとしない(ルールはコメントで記述しておく)
- KPIを捉える範囲(マイルストーン)を明確にするためにEnd-to-Endプロセス(ある仕事が開始され、結果を出すまで)を、ひとかたまりのプロセスとして扱う
これらのポイントは、BPMNに限らず他の表記法でモデリングする際にも同様に大切な事柄です。
ただし、BPMNではビジネスアナリストが作成したハイレベル・ビジネスプロセスモデルを利用して、プロセスデザイナがミドルレベル・ビジネスプロセスモデルを作成することができますので、作業の効率性と正確性が大きく向上するというメリットがあります。
次回は、これらハイレベル・ビジネスプロセスモデル作成のポイントについて、もう少し詳細な考察をしてみたいと思います。
執筆
NECネクサソリューションズ
シニアコンサルタント 冨澤 雅彦
[日本TOC推進協議会 正会員、日本UML推進協議会 BPMN研究会副主査]
本コラムに関連するコンサルティングサービス
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