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コラム

第5回 データ活用

- 中堅企業におけるこれからのIT戦略 -

2020年3月

はじめに

前回は企業のビジネス活動を支え続けてきた基幹業務システムの移行、2025年問題の中心課題でもある「レガシー移行」ついてご紹介しました。基幹業務システムの移行は将来に向けた今後の事業活動にもっとも影響を及ぼす重要課題ですが、今回はその背景にもある、何故私たち企業が2025年問題やDX(Digital Transformation)への取り組みを行うのか…の本質課題でもある情報利活用(データ活用)について、特にそのアプローチ方法のご紹介をしたいと思います。

企業におけるデータの整備状況

一般社団法人日本情報システム・ユーザ協会の『企業IT動向調査報告書2019』の中に、“マスターデータはどの程度整備されているのか”という分析がありました。それによれば、依然として古い基幹系システムを抱えている企業が多い中でも、事業特性に応じてマスターデータの整備が進められているものや、基幹系システムの整備が進んでいない状態でデジタル化に取り組んでいる企業も相当数あることが分かったというものでした。

本コラムで取り上げてきた「情報システム部門の今後の役割と体制」や「ITインフラの見直し」「レガシー移行」などのテーマにも共通する、システムを維持する人材の高齢化、基幹系システム再構築に向けたスキル不足等、人材に関する重い問題を抱えている企業も多いとの事で、デジタル化以前の本質的な問題がクローズアップされることとなったとの事でした。また、企業が属する業界で大きな変化があった際(事業環境見直しの必要性など)に、事業基盤となる情報システムやマスターデータの整備能力のある企業とそうでない企業では、その後の対応力に大きな差が出ると予想されています。経営環境の変化を予測することは容易ではありませんが、データ整備などの対応力の差が、企業経営の将来を分けるといっても過言ではないとの提言になっています。

第1回目のまとめでも触れましたが、「データ活用」というテーマはDXの本質(1丁目1番地)でもあり、これまでの事業活動で蓄積されたデータをアーキテクチャ化、構造化して、さらにはデータプロセスの標準化につなげることが、企業情報システムの課題となります。

※一例として企業グループ間や異なる事業ドメイン、部門間でのデータを統合させる際の一連の手法、会計システムなどでは勘定科目A/Cの運用上の整合など

参考引用

一般社団法人日本情報システム・ユーザ協会『企業IT動向調査報告書2019』

基幹業務システムと利用部門におけるデータ活用上の問題点(あるあるEXCEL活用)

情報システム部門では、基幹業務システムの運用プロセスに従い、日次、締次、月次、四半期、半期、決算時、年間など決められた業務サイクルで全社版管理帳票などの作成を行います。また、データベースから必要なデータ抽出操作を行い、部門毎の管理帳票などの作成を行うと同時に、各利用部門へ1次加工データとして提供します。

各利用部門では、担当者が情報システム部門より提供されたデータを用い、個人のEXCEL(作業データ)を作成します。そこでは、手作業による転記(コピー&ペースト等)が行われ、最終的に自部門で必要な情報を付加したのち、自部門の管理帳票として作成します。

これが上位会議などで経営への報告書として提出され、データは部門固有のEXCELとして管理されます…どこの企業でもごく普通に見られる様子ではありますが…

これを良きにつけ悪しきにつけ、いわゆる“あるあるEXECL活用”の問題点として、その解決すべき課題整理を行い、情報利活用の見直し、データ活用の高度化に向けた業務プロセス改善を進めて行くことが、DXに向けたアプローチの“はじめの第一歩”にもなって行くのではないでしょうか。

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図:基幹業務システムと利用部門におけるデータ活用(例)

情報利活用におけるあるべき姿と問題点の整理(一般的な手法)

企業における情報利活用プロセス見直しの一例として、まず既存資料の整理(経営、事業部門でどのような資料が作成されているか)を手始めに、会議体の整理(経営、事業運営などの各レベル)を行います。ここでは、既存資料と会議体のマトリックス化を行い、全社レベルでの作成資料の実態とその資料が活用されている会議体の見える化を行い、有用性の評価や今後においての継続活用を検討します。継続活用としてその有用性が確認された資料については、業務効率化、生産性向上の観点からシステム自動出力可否などの検討、BIツール適用などを検討します。

また、数値作成や数値算定などの方法について各部門の合意を行います。その過程において算定に必要なデータの特定や検討結果に関する経営、事業責任者の承認などを受け、全社レベルでの業務プロセスとして整備を行います。最終的に業務分掌として所管部門が規定され、正式に運用ベースに乗ることになります。

一般的事例としては下表に示すプロセスに従い、継続活用の有用性が評価された資料に対して、当該プロセスのあるべき姿(望ましい状態)、現状の想定される問題点、原因などの整理を行い、これ以降の関連業務プロセスに繋げて行きます。データ収集から処理(加工)、利用、分析作業の実際の作業フェーズや情報利活用促進の面から目標となる状態の整理を行います。現状を踏まえ、各フェーズにおいての現在の状況や問題点についての分析を行い、そこでの原因を解決するための“方策を検討”して行く事になります。

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表:情報利活用におけるあるべき姿と問題点の整理(一般的な手法)

データ活用ワークショップ

ここからは、「データ活用」に向けた企業の具体的実践(方策の検討)として、ワークショップ型アプローチをご紹介します。前章でも取り上げた“あるあるEXCEL活用”をぜひ再整理して見てはいかがでしょうか。

データ活用ステージの4段階

データの本格活用に向けては、情報活用ステージがあります。データ活用ワークショップでは、ステージ1から4までのステップ毎に、「データ活用」における問題課題の分析と解決案、ツール利用技術の整理までを行います。

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図:データ活用ステージの4段階

データ活用検討の流れ 全体像

ワークショップでは、データ活用の目的をまず明確にし「データ活用」における全社レベル、各利用部門の利用イメージの具体化、活用データのシステム内の状態や業務活用フローまでをテーマ別施策として整理、検討を進めます。

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図:テーマ別検討の流れ

ワークショップのスケジュール例

ワークショップは標準プロセスにもとづいて、実施内容と各実施回におけるアプトプットを合意した上でスタートします。大きく3つで構成されていて、ワークショップの目的確認とデータ活用における問題点を出していただきます。それを共有した上で現状把握と課題の整理を実施します。これ以降、下表に示すテーマ別に実施内容の検討を進めて行くことになります。各テーマとも「データ活用」においては重要なテーマですが、企業の成長戦略や事業戦略を実現させるためのシナリオ検討を重視して、部分最適に陥らない結論を導き出すことがもっとも重要です。

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表:ワークショップのスケジュール(例)

ワークショップのアウトプット例

情報利活用施策の展開方法、考え方

これまでの章でも既に触れていますが、情報利活用においては一般的セオリーとして活用対象となるデータが有用な形にまとめられた情報となっている(InformationからIntelligence化された情報である)事とされています。数値情報をただ単に積み上げられても、誰もが「利活用」する事は難しく、「有用な(使える)形」になっている事が重要です。

ビジネスの現場で、俗に言う“数字感覚を持っている人”のノウハウが共有され展開できれば望ましいですが、それはすぐには難しいでしょう。図表など情報利用の目的に沿って数値情報を視覚化することが有用(ex.ダッシュボードなど)だと言われています。具体的にはBIツールなどの導入を行い、展開を図る事が施策として挙げられます。

ここでは、情報利活用に関する検討プロジェクトやワークショップ(前章)などからの施策パターンを仮説として例示して、その推進上想定されるメリット・デメリットを整理しました。

※BI(Business Intelligence)基幹業務のデータベースなどに蓄積されたデータを抽出・加工・分析し、意思決定に活用できる形式にまとめることを指す。

施策パターン1

部門代表者に情報利活用に関するリテラシー教育を実施する(既存環境の活用強化)

メリット ・短期間に施策の全社展開が図れる
デメリット ・部門代表者の展開手腕が問われる
・利用技術に関して格差が生じる可能性がある
・既存ツール活用強化に向けたヘルプデスクなどの整備が必要

施策パターン2

ツール導入、システム構築を前提とした情報利活用基盤整備プロジェクトを立ち上げる

メリット ・プロジェクトとして「全社システム(ex.経営コクピット等)の構築」という目的が明確となり、導入効果についても全社レベルで共有する事が可能
デメリット ・プロジェクト推進に関する組織体、予算、検討期間と工数が必要
・実現する機能、仕組みが全体最適を優先とするため、部門最適化に関する調整も必要

施策パターン3

専任部門(情報システム部門など)からデータ分析要員をアサイン、外部支援組織(コンサルなど)と連携して、各部門(利用部門)のデータ分析要員の役割、推進役を担う

メリット ・利用部門、利用者主体での情報利活用の仕組みが構築できる
・利用部門と情報システム部門の緊密な連携が図れる
・データ分析要員の実践教育の場ができる
・スモールスタートが可能
デメリット ・利用部門(現場)の協力が必要
・データ分析要員の養成や利用部門との信頼関係醸成に時間がかかる
・要員育成にしての専門教育やコンサル費用などが必要

まとめ

今回は、中堅企業におけるこれからのIT戦略として「データ活用」について、実践的なアプローチ方法と検討のポイント、展開方法などを整理させていただきました。

そもそもの背景として、AI、IoT、データサイエンス(広義のデータ活用)などによる“第四のDigital化”が世界レベルでの進展を見せる中、特に日本ではITによる産業の成長路線に大幅な乗り遅れ感があると懸念されています。

この現状については第1回目のコラムでも触れたように、政府としては公的規則、ルールを整備してでも、産業構造の大幅な転換を進めたい、法制度面を含めた総合政策で進めていく必要があると考えています。

レガシー(基幹業務システム)の運用に定常的なコストが発生して、新たな事業分野へのIT投資や技術開発が進んでいないと言われる中、「ITインフラの見直し」や「レガシー移行」などの課題解決を経て、企業情報システムにおける「データ活用」を刷新することで、事業のパラダイムシフトを図る事が最後の取り組みテーマとなります。

次回は、本コラムの最終回として「IT中期計画策定」について、ご紹介します。

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