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「月刊総務」編集長が語る、総務から始める働き方改革(第2回)

在宅勤務は大企業しか導入できないのか?
中小企業でもうまく機能させるためのポイント

2017年3月

在宅勤務は大企業しか導入できないのか?
中小企業でもうまく機能させるためのポイント

安倍内閣が最大のチャレンジとする「働き方改革」。その中には、テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方の項目が入っています。

また、2013年6月に政府が閣議決定した「世界最先端IT国家創造宣言」においても、「雇用形態の多様化とワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現」のために、特に就業継続が困難となる子育て期の女性や育児に参加する男性、介護を行っている労働者などを対象に、週1回以上、終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワークの推奨モデルを産業界と連携して支援していくことを宣言しています。

その具体的な目標として政府は、2020年にテレワーク導入企業を2012年度比で3倍、週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者数の10%以上(国土交通省の推定では2015年度は2.7%)に向上することを掲げています。また、こうした取り組みも含めた女性の就業支援などにより、第一子出産前後の女性の継続就業率を55%(2009年は38.0%)、25歳から44歳までの女性の就業率を73%(2011年は66.8%)まで高めることを目標としています。

大企業では始まっている在宅勤務

実際にテレワーク制度を導入する大企業は増えています。例えば、日産自動車は2014年に全社員を対象に在宅勤務が出来る制度を導入しました。チャット・音声テレビ会議システムをフル活用し、業務中はリアルタイムでパソコン画面に社員の顔を映し出して、仕事の状況ごとに「連絡可能」、「取り込み中」、「応答不可」、「一時退席中」などの表示切り替えができる仕組みを導入しています。

また日本航空は、2014年に在宅勤務制度を導入して以降、トライアルと改善を繰り返しながら、社員が利用しやすい制度を模索してきました。現在では自宅や実家、喫茶店、図書館などでも制度の利用が可能となり、一般的な「在宅勤務」よりも自由度の高い制度になっています。

大手企業が在宅勤務に本腰を入れるようになった背景として、テレワークの導入支援を行うベンチャー企業、テレワークマネジメントの代表取締役である田澤由利さんは、以下のように語っています。

「これからは介護の問題が深刻化することが挙げられます。少子化によるひとりっ子の増加により、二人で四人の親の介護を担う夫婦が増えていくと思われます。また、男性の生涯未婚率や共働きの夫婦の増加などによって、女性のみならず男性についても介護の負担が大きくなっていき、40歳、50歳の部門長クラスの男性が親の介護により、休職や退職につながる可能性が増えてきました」(『月刊総務』2014年4月号 特集より抜粋)

在宅勤務の導入にあたっては、「家で仕事をするとサボってしまうのではないか」「在宅勤務は労働時間管理が難しい」といった不安がつきまといますが、ICTを活用することで、こうした不安をぬぐいさることができます。例えば、出退勤をクラウド上で管理し、始業と終業だけでなく、着席、退席をボタン一つで申告することによって、会社の管理者や同僚と状況を共有することができます。同様に、社内で働いている社員も同じシステムを使うことで、在宅勤務者にも職場の状況が見えるようになります。

テレワーク制度をどう機能させるか

一方、中小企業ではテレワーク制度の導入はあまり進んでいません。その理由を聞くと、「そんな余裕はない」という答えが多いようです。しかし、中小企業こそ導入を真剣に考えるべきでしょう。有能な人材を育児や介護で失うことの損失は大企業の比ではないからです。

もし御社がテレワーク制度を導入する場合、最初に決めるべきは対象者や期間です。

育児支援、介護支援のための制度であるならば、対象者は当然、そのような事情にある人になります。対象を限定せず、個別に許可するという方法もありますが、基準は明確にしておかなくてはなりません。ただし、自律的な働きのできない社員に、在宅勤務は適用するのはおすすめできません。

次に、在宅勤務の期間と頻度を決めておきます。期間を限定するかどうかは、これは在宅勤務導入の目的、対象によります。また、パソコンなど業務上必要な機器は会社が貸与するのがいいでしょう。

しかし、対象者や期間などを決めただけでは、テレワーク制度は機能しません。そこでテレワークマネジメントの田澤さんが教えてくれた、テレワークをうまく機能させるための注意点を紹介しましょう。

1.在宅でできる仕事をどう作るか

「テレワークでできる仕事が少ない、作るのが難しい」という声は、非常に多く聞かれます。担当者はまるで呪縛にかかったように、テレワーク用の仕事を作り続けなければならないと思い悩むようです。テレワークでできそうな仕事を作るということは、新たな業務を増やすということで、生産性の面からも望ましいものではありません。在宅勤務の仕事は作るのではなく、「いつもの仕事をいつもと同じ評価でできる」ように仕事のやり方を変えることがポイントです。

そのために必要なプロセスは、資料のデジタル化です。ペーパーレスに取り組んでいる企業は多いと思います。同時に業務の棚卸しを行って、業務のリスト・ランク付けやワークフローの見直しを実施。共有すべき資料はサーバー上や文書管理システムで管理し、遠隔からでもアクセスできるようにしておくことです。この際、「リモートデスクトップ」や「仮想デスクトップ」などのシステムを導入して、セキュリティを担保しておくことが重要です。

2.勤務時間をどう管理するか

人事評価にも通じることですが、「見えないから管理できない」という発想を捨て、離れていても見えるようにすることが大切です。タイムカードをクラウド上に置き、中断・復帰機能を設定すれば、テレワークする本人も、気兼ねなく自宅などで仕事をすることができます。

3.コミュニケーションをどう取るか

これも基本はいつもと同じようにですが、ICTツールを活用します。社内会議を全員でWeb会議にする(テレワーク勤務者だけをWeb会議にすると蚊帳の外になりがち)、仮想オフィスを導入するなどリアルタイム性が高いものから記録の必要性を重視したものまで用途に応じてさまざまなツールを試してみることをおすすめします。ICTツール導入の留意点は、テレワーク勤務者とのコミュニケーションは上司だけでなくチーム全員と行えるようにすることです。

4.緊張感をどう維持するか

ポイントは「上司も含め複数の人に見られている」、「周りの人が仕事をしている様子が見える」、「ときどき話しかけることができる」です。Webカメラや時間管理ソフトの導入で解決できることが多くあります。

5.他のメンバーの不公平感をどう解消するか

上司と在宅勤務者本人だけで話し合いを進めがちですが、重要な点は同僚たちの理解を得ることです。特に日本企業では、ジョブディスクリプションが明確ではなく、大部屋主義とも言われています。部門メンバーの一人が在宅勤務をすることで、他のメンバーにどのような負担がかかり、どのような対策を取るのか、事前によく話し合うことが不可欠です。 (以上、『月刊総務』2014年4月号 特集より抜粋(1~5))

テレワークでダイバーシティを推進

テレワークは、ダイバーシティを推進させるための一つの有力な手段です。そこで最後に、ダイバーシティについて一言付け加えておきましょう。

ダイバーシティの目的とは、多様性の活用です。複雑化するマーケットに対して、様々なアプローチをする上で、多様な視点が必要となります。また、様々な価値観や属性を持つ従業員が増えれば、社員相互の刺激ともなり、それによって社員の教育効果や活性化効果も期待できます。

ダイバーシティを推進するためには、従業員は多様性があると認識し、個々人が柔軟に気持ちよく働ける施策を提供し、個々人に選択させることが大切です。テレワークに代表されるような、個々人がパフォーマンスを発揮しやすいさまざまな施策を提供していくのです。

結果、ダイバーシティの本質は成果主義となります。どのような働き方をしようと成果を出せばよく、逆に言うと、働き方は個々人の価値観や状況により選択されるもので、そのことに対しては評価をしないのです。個々人の属性、働き方にかかわらず、個々人の成果に着目し評価するという、欧米型社会へと変化することでもあるのです。

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