コラム
製造業におけるAI活用検討の第一歩
【第2回】製造業・プロセス業における画像判別AI活用の検討ポイント[前編]
2019年3月
目視検品へのAI活用
第1回では、AIの活用に向いている例として、第1回 表2のような業務を例示させて頂きました。
今回は、その業務の中の1つ、もっともイメージし易く、AIにしかないメリットを活かせると思われる「基準のぶれない画像検品による検品支援・自動検品」について説明したいと思います。
まずは、よく対比される「従来の画像処理技術」と「AIによる画像処理技術」の違いを定義し、そのメリットを確認しておきましょう。ここでは、図4のように、「人手で不良の基準を設定するもの」を従来技術、「機械が自己学習するもの」をAI技術とした上で、その違いを表3に整理しました。
上記のように、AIの登場により、従来ではカバーできない領域が対応できるようになり、またその精度も、ディープラーニングの登場により、飛躍的に向上しました。
しかし、従来からの「人手で不良を定義する」画像処理技術でも、かなりのことが実現できるようになっています。
また、そもそも「現在の技術でも、画像判別が難しい(非常にコストがかかる)」検品業務も存在します。
そこで、次に、自社の検品が、「画像判別が難しい」「従来技術に向いている」「AIに向いている」の3通りのうち、どれに属するかを判断しましょう。
「画像判別が難しい(非常にコストがかかる)検品業務」の特徴
まず、画像判別が難しい例を、表4に整理しました。
いかに画像検品が高精度でも、その判断材料は、基本的に「カメラに映る画像」に限定されます。
つまり、カメラに映る画像に「そもそも不良部位が映りにくい」ような検品は、画像検品に向いていません。
また、製品種類が非常に多く、それぞれごとに検品箇所が異なる場合や、製品の改廃サイクルが非常に速いような業務も、人間の高度な柔軟性でなくては対応できない場合があります。
このような業務は、画像処理技術を検討する前に、その他のセンサー技術等での解決を模索するか、高価な周辺機器(ロボットアーム、ハイスピードカメラ等)を用いてでも画像検品を行う価値があるか、検討する必要があります。
「従来からの画像処理技術に向いている画像検品」の特徴
次に、同じ画像検品でも、「厳密に、数値で定義できる基準がある」かつ「ランダム性の低い」業務であれば、人間が1つ1つ不良の特徴を設定していく従来技術の方が、よい精度で検知できることが多くあります。
例えば、表5のような業務です。
上記のようなものの中でも、AI技術でカバーできる場合も多々あります。
しかし、大抵の場合は、AI技術を使った方が高価になったり、導入までの期間が長くなったりするため、あまりお薦めできません。
あくまで目的は「課題の解決」にあるため、AI技術にこだわる必要はないのです。
AIに向いている画像検品の特徴
上記以外の場合、機械学習やディープラーニングに向いている業務である可能性が高いと考えられます。 表6に、いくつか例を挙げておきましょう。
冒頭の表4で挙げたようなメリット(官能検査、多様・複雑な不良、変化への対応)と一致していることがわかります。
自社の検品業務は、AI活用に向いているものだったでしょうか?
次回のコラムでは、AIによる画像検品の種類と、導入の流れをご説明します。