公認会計士が回答!会計・経理担当者向けペーパーレスへの取り組み(第2回)
電子契約システムの利用で知っておきたい留意点とは
2022年9月
Q.
電子契約システムを利用しようと考えています。電子契約によってどのような業務効率化を実現できるのでしょうか。また、利用に際して、留意すべき点はあるのでしょうか。
A.
(1)電子契約システム
電子契約とは、契約内容を電磁的方式で表記し、その内容を証するために署名・捺印などの方式に代わり、電子署名やタイムスタンプ、あるいは第三者の用意した改ざん不可能な保存場所に保持することで従来の書面契約に代える契約の仕方をいいます。
電子契約のメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 印紙税・郵送料などのコスト削減
- 書面出力、袋とじの製本、双方で捺印をするための時間の確保、郵送といった手間を省略できることによる業務効率化
- ファイリングして、書棚等に保存するスペースの節減
- システムの中で保存され、電子署名等の真正性確保の手法により、改ざんされるおそれがない。
また、書面で保管されていると、内容を見たくなった場合は保管場所まで出向かなければならず、多くの部署が内容を確認したいような契約書の場合、部署ごとにコピーが保存されるといった無駄も生じます。
(2)電子契約システム前後のシステム化の必要性
このように電子契約には大きなメリットがあり、いくつものサービスが提供されるようになってきています。契約書管理に絞り込んで考えれば、取引先との契約締結のプロセスの中で、最後の契約書捺印の局面で電子契約システムを利用するというのが普通に考えられるところです。
しかし、取引先と新たな契約を締結するにあたっては、社内での承認手続が求められます。そこでは、締結しようとする契約の概要、契約をする目的やメリット、検討すべきポイント、自社の利益確保のために必ず織り込むべき条項などが議論されるはずです。この過程で原案を作り、法務や顧問弁護士のチェックを受け、チェック後の案を社内で検討し、取引先に投げかけます。その後、取引先の法務チェックにより修正依頼事項が到着して、これを社内でどのように対処するか検討します。これをいちいち書面に出力して、関係者の間を駆け回ったのでは非効率です。通常は、ワークフローのシステムに載せて行うことで、関係者の意見のとりまとめもスムーズになると思われます。
さらに契約相手によっては、こういう電子契約サービスを利用してほしいという要望を受ける場合もあり、電子契約を始めると、数年の間に複数の電子契約サービスの利用をするようになります。そうなると、「甲社との電子契約はA電子契約で、乙社とはBだったか、Cだったか」といった状況に陥ります。したがって、契約書を電子契約サービスのサイトに保存するというのは、必ずしも便利とは言えません。契約書の管理簿で、この契約書は、どこのサイトにあると管理する必要が生じてしまいます。そこで、契約書の保管も電子契約サービスからダウンロードして、文書管理システムなどで一元管理するというのが好ましいのではないでしょうか。
こうして、作成過程から保存過程までを一貫して電子化することが電子契約で最大限の業務効率化を図るポイントだということになるのです。
契約業務を効率化する「電子契約」とは
従来の「紙・ハンコ」に依存した契約業務では、契約締結の長期化を招くだけでなく、契約における更新漏れの発生・書類の紛失など、多くの重大なリスクを抱えています。
滞在するリスクを改善し、契約業務を効率化する「電子契約」について、詳しくご紹介します。