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公認会計士が回答!会計・経理担当者向けペーパーレスへの取り組み(第8回)

クラウドストレージの利用とセキュリティ

2023年3月

Q.

当社では、電子取引の保存に関連して、電子取引により取得したPDFファイルやスマートフォンのスクリーンショットといった画像ファイルについて、ファイル管理マネジメントを提供するクラウド上のストレージに保存したいと考えています。

従来は社内LANの中で完結していたファイル保管が、クラウド上に展開されることになりますが、セキュリティなど、留意することはありますでしょうか。

A.

(1)電子取引データの保存とクラウド

令和3年度税制改正で電子取引の保存義務が打ち出されましたが、ネット通販やホテルのネット予約のほか請求書のPDFファイルを電子メールに添付してやり取りするような取引について、検索性の確保が課題となっておりました。中小企業も含めて、多大な影響が生じることになり、令和4年度税制改正で2年間の宥恕期間が設けられることになりました。さらに、令和5年度税制改正で、電子取引の保存要件の緩和と保存が困難な企業への対処という2つの措置が講じられたのは、第7回でご説明したところです。

こうした中、多くの企業では、クラウド上でのファイル管理システムを導入しようとしています。電子帳簿保存法の要件を満たしてファイルを保存しようとする場合、クラウド上のサービスを利用すると以下のようなメリットがもたらされます。

  • 保存するストレージの容量などを気にする必要がない
  • クラウドを利用することで、アップロードしたファイルをOCR処理して、日付、取引金額、取引先名などを自動的に読み取ってくれるため、適切な管理簿を作りやすくなる
  • 旅費交通費や経費精算に関しては、読み取った内容から経理用の自動仕訳まで作成してくれるものがある
  • クラウドの背後でAIも機能することで、使っている間にOCR処理の精度や自動仕訳の精度が高まってくる

ファイルを保管してくれるだけでなく、OCRやAIが背後で動いているという点で、オンプレミスの企業内システムより優れているという側面がある印象です。

(2)クラウド利用上の注意点

こうしたクラウドサービスを利用するようになってくると、その分だけ、ネットセキュリティの課題も出てくるのではないでしょうか。クラウドサービスを利用する際のリスクとしては、以下のようなものが挙げられています(総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」より)。

  1. 障害などによりデータが消失する
    仮にクラウドサービスに障害が発生した場合、クラウドサービス上のみにデータを預けていると、大切なデータの復旧ができなくなる可能性があります。クラウドサービスを利用する場合にも、定期的にバックアップの確保は必要です。
  2. 預けているデータが外部に漏洩する
    クラウドサービス事業者へのサイバー攻撃やその他の要因で、預けているデータが外部に漏洩する可能性があります。契約するクラウドサービス事業者のセキュリティ対策のレベルや保証の範囲などを、利用規約などであらかじめ確認しておくべきです。
  3. クラウドサービスのアカウントが第三者に悪用される
    ウイルス感染などによって、利用しているクラウドサービスのユーザIDやパスワードが流出した場合、第三者による不正アクセスにより、クラウドサービス上に保管している情報が漏洩する可能性あります。あらためてユーザIDやパスワードの管理も重要となります。

実際、クラウドサービスの利用では、社内システムと異なり、下記のような変化が生じます。

  1. ファイルをアップロードしたり、そのファイルを閲覧したりするたび、インターネットに接続することになる
  2. 社内からのアクセスだけでなく、外出時のノートパソコンやスマートフォンからのアクセスも発生する
  3. 社内からのアクセスではIPS/IDSやファイアウォールを経由して端末からの保護がなされますが、外出時のネット接続ではセキュリティが弱い状態になる

(1)については、社内のインターネット接続環境を強化しておく必要があると思われます。従来、Webページの閲覧とメールのやり取りくらいのネット接続だったものがファイルの閲覧など、ネット接続の頻度と量が増加しますので、回線の容量などを強化しておく必要があります。

(2)と(3)については、クラウドストレージには、さまざまな機器が接続し、社内からのアクセスに比較するとセキュリティの弱い状態になっていくことが推測されます。ノートパソコンやスマートフォンにセキュリティソフトをインストールしてもらうといった対策を徹底しておくことも必要でしょう。

こうしたリスクはあっても、本来、行うべきセキュリティ対策をしていれば、防止できるものは多いはずです。クラウドサービスの利用は、避けられない状況であることを認識して、システム的なセキュリティ、従業員への教育を含めた個々の業務でのセキュリティなどを意識していただきたいと思う次第です。

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