公認会計士が回答!会計・経理担当者向けペーパーレスへの取り組み(第12回)
インボイスの取得をもう少し楽にできないか
2023年8月
Q.
当社では、各種の課税仕入の取引に係るインボイスの入手の方法について、検討を終えつつあります。その中で残った課題の1つが、営業担当などの利用する高速料金についてのインボイスの取得です。高速道路の通行料をETCカードで支払った場合の利用明細を入手する手数が負担になりそうだと考えていますが、どうしたら良いでしょうか。
A.
(1)クレジットカードの利用明細での計上は
営業車での移動において、高速道路を使った場合、ETCカードにより高速料金を支払い、法人登録のクレジットカードの利用明細書から経費を計上するというのがこれまでの経理の手法だったと思います。本来、消費税法の仕組みによれば、クレジットカードの利用明細書(引き落としの明細)は、消費税法がいうところの請求書ではないため、こうした計上では本来は請求書の保存に当たりませんでしたが、いわゆる3万円基準があることで、証憑なしでもよいということになっていたと思います。しかし、インボイス制度のスタートと共に3万円基準が無くなるため、消費税法のルール通りの処理をしようと思うのであれば、何らかの形で、ETCカードにより利用した高速道路の利用料の明細を入手することになります。
(2)ETCカードによる高速道路料金
ETCカードにより高速道路、有料道路を通行した場合というのは、料金所での停車がなく、証憑に相当するものの受け渡しがありません。したがって、一般的な取引と異なり、ETCカードにおけるインボイスはどのように取得するのかというところからスタートすることになります。
ETCカードを利用した高速道路料金については、インボイス対応が予定されているWebサービスがあり、インターネット上で「利用証明書」を発行することができます。この利用証明書は、各走行に応じて道路事業者ごとに発行されるものであるため、インボイス登録番号には、その利用証明書を発行(通行料金を徴収)した道路事業者の番号が表示されることになっています。また、利用証明書は、登録番号のほか、適用税率や消費税額等といった必要な記載事項を追加することで、制度要件を満たした有効な様式への変更を行う予定になっています。
ETCカード番号、メールアドレス、過去の利用年月日、車両番号、車載器管理番号(ETC車載器ごとにメーカーから付番された19桁の識別番号)を準備し利用証明書を発行すると、令和5年10月以降は、これに走行をした高速道路会社等のインボイス登録番号が表示されるということになります。
(3)取得のための作業を合理化する
こうした利用証明書の表示とPDFファイルでの保存は、ETC車載器ごとの利用者登録の数の分だけ繰り返して実施することになると思います。ETCカードを利用する従業員が20人いれば20回、100人いたら100回もダウンロード作業をするのかと思うと気が遠くなる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こうしたときにRPAという手があります。RPAとはRobotic Process Automationの略ですが、ロボットといっても人間の形をしているわけではなく、パソコン上で動作するソフトウェアです。データの書き込み・取り出し、Webサイトからの情報収集、社内アプリ操作、チェック(2つのファイルの間での差異の拾い出しなど)といった作業をあらかじめプログラミングした通りに実行してくれるシステムです。これを使えば、ETCカードを登録しているID、パスワードでログインして、利用明細書をダウンロードして、適切なファイル名に変更して、あらかじめ指定したフォルダに保管するといった作業を人数分だけ自動で実行してもらうことができます。
RPAは、あらかじめ設定した定型作業であれば様々な形で実行することができます。たとえば、電子取引で取得された請求明細書データと検収済みの納品書データを照合して、差異のあるデータのみを抽出するといった作業ができれば、未到着や品名違いなど検収できなかった取引について支払いを保留するといったことが容易にできます。これをそれぞれの資料を出力して、目でチェックを掛けたら非常に手間ですし、見落としが生じるかもしれません。
インボイス制度で、取引を裏付けるインボイスの取得が必須になってきている中、取引を電子化し、さらに電子化したうえで、作業を効率化するRPAなどのツールを活用することが生産性を高めるうえで、重要なことだと言えるでしょう。