公認会計士が回答!会計・経理担当者向けペーパーレスへの取り組み(第3回)
取引先から届く大量の紙書類。どう効率化する?
2022年10月
Q.
当社は、仕入に当たって客先指定伝票を使わざるをえない関係性の中で業務をしており、当面の間は、納品書、請求明細書、請求書などが書面で大量に送られてきます。こうした状況で業務の効率化を図るにはどうしたらよいでしょうか。
A.
(1)スキャナ保存の活用
社内のワークフローや発行する書類については、ペーパーレスを実現することで業務効率化を図ることができます。しかし、取引先から書面を受領してしまうと、この処理に関しては、手作業、手入力をするようになり、不効率が残置されることになります。大量の書類が受領される状況で、電子化、業務効率化を図ろうとするならば、スキャナ保存を行うことが真っ先に想定されます。
ADF(自動原稿送り装置)の付いたスキャナを導入し、受領の都度の読み取りや業務処理サイクル方式による月次単位での読み取りを行い、画像データについてはOCR(光学的文字認識)によって書面の記載事項をテキスト化することで、電子計算機による処理が可能になります。その結果、電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の検索可能性の要件も満たすことができるようになります。
(2)スキャナ保存と業務システムの関係
しかし、スキャナ保存で電子化することであらゆる業務処理が可能になるかといえば、これだけでは十分でない場合があります。購買管理システムなどの業務システムでは、データベースにより処理を行うため、システムが求めるすべてのデータを用意する必要があります。しかし、スキャナ保存をして、OCRを行う書類、たとえば納品書上に記載されているのが、当社ではなく仕入先の会社側が使用している商品コード、商品名であった場合には、当社の購買管理システムの商品マスタのコードに該当するデータは納品書上に存在しないということになります。そうなると、OCRにより作成されたデータをそのまま購買管理システムに読み込むということは不可能です。
このような場合、作成されたデータの商品名から自社の商品コードを割り当てるといった処理プロセスを置くことで、購買管理システムに読み込めるデータにするといったことが考えられます。また、スキャナ保存システムから出力されたデータに商品コードを追加したうえで、これを購買管理システムに読み込めるようなデータ配列に並べ替えるといった作業も必要です。このためのプログラムを作成する、あるいはRPAで処理をするといった工夫が必要でしょう。
こうしたひと手間を掛けることで、購買管理システムの中で、注文データと納品データの照合、納品データと請求明細書データの照合から支払いへと進めること、あるいは検収データと請求明細書データの照合といったことができるようになります。
このように考えるとスキャナ保存システムとは、電子化と保存のシステムという側面に加えて、本格的な業務処理をするための電子データ取得のための入り口という側面もあることがわかります。また、発注の前の承認プロセスは、ワークフローシステムで行うこともあるでしょう。また、購買管理システムに読み込めるようなデータを作成して、購買管理システムに読み込ませるということは、在庫管理や原価計算とも連携してくることになります。このようにスキャナ保存を行うということは、業務処理プロセスの中のひとつの過程であり、業務全体の中で効率化を考えていく必要があります。
取引先からの紙書類の取扱いを効率化しませんか?
社内のデジタル化が進み、ペーパーレスによる業務改善が進んでも、取引先から届く注文書や請求書のような紙の書類は、まだまだ残っているのではないでしょうか?
自社だけの力ではどうしようもない取引先からの紙の書類の取扱いや基幹システムへの登録までの業務全体を、デジタル化・ペーパーレス化することで、業務効率をあげリードタイム短縮を考えてみませんか?